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壁面緑化実践事例・取材日記「二番町ガーデン」の巻 三菱地所設計株式会社武田様へのインタビュー

オフィス・共同住宅・店舗の複合建物「二番町ガーデン」、ここは周囲の空間と調和するように緑で覆われています。このビルに壁面緑化や屋上緑化を取り入れられた背景、現在の状況について株式会社三菱地所設計 建築設計部 主幹の武田有左さんにお話を伺いました。

二番町ガーデン壁面緑化外観
宜しくお願いします。二番町ガーデンでは、6階(高さ25m)まで北西面の壁面が帯状に緑化され、屋上には緑豊かな庭園が広がっています。都内でも珍しい環境配慮型のビルが誕生した背景を教えて下さい。
武田さん
千代田区二番町は、落ち着いた住宅と商業・業務施設が共存している地域です。もともと緑が残っていた場所でもあり、今までの環境を考慮することがスタートにありました。7階部分の屋上やステップ上のテラスを緑化しようということは、かなり最初の段階から決まっていましたね。一方壁面には、周りの住宅街とお互いに目線が合わないようにする目隠しスクリーン的な機能が求められていました。
どのように対応されたのですか?
武田さん
南側は見下ろし防止のための水平ルーバー、視線の近い東側は有孔折板による御簾状のスクリーンになっています。西側は西日のこともあり、熱の反射をしないものを模索していました。壁面緑化の案も検討していましたが、その時点ではまだ技術的にも解決しきれていない状況で、当初は再生木を活かしたルーバーを想定していました。その後、西面のスクリーンとしてより良いものは何だろうかと検討していく中で、壁面緑化の技術が進歩していることが分かり、現在のような形になった次第です。施工者の大成建設さんと東邦レオさんには、植物の選定のところからご協力いただきましたが、確かに壁面緑化に導入したヘデラカナリエンシスは強くて、元気に育っていますね。
事前に十分養生しておいたことで、竣工当初から緑量を確保することが出来たと思います。施工から1年半が経過しましたが、周囲の方々の反応はいかがでしょうか?
武田さん
二番町ガーデンには、ある民間企業が本社ビルとして入居されています。入居決定の1つの要素として、緑に覆われた建物であることがポイントになったとお聞きしています。エントランスから、緑の光景を見ることが出来ます。訪れる方をお迎えする緑、それはそのままテナントに入られる企業のブランド力向上にも繋がるのではないでしょうか。事業者としても、対テナントという意味で評価されていると思います。最初、周辺の方々は、大きなビルが建つということに対してネガティブな見方をされていた部分もありました。しかし最終的には、他に無いきれいな建物になったことに対して大変喜んでいただいており、設計する立場としては非常にうれしいことです。「初めて通りがかる方が、びっくりされる」と周りの方がおっしゃっていました。引き続き客殿・庫裡の建て替え計画のお仕事を戴くことになった隣接のお寺から眺めると、人工的ではありますが、裏山的な景観になっています。これは都市に生まれた新しい景観なのかもしれません。
Q
ご設計の立場から「壁面緑化」についてどう思われますか?
武田さん
竣工時のことは、特に心配していませんでした。しかしそこから先、「暑い夏、寒い冬を通じて何年も何年も緑を維持できるのか?」というところが、設計サイドから見て懸案事項でした。今回採用しているユニット式の壁面緑化システムは、個別に取り外せて最悪の場合取り替えることができるというのは、安心感があります。事業者にとっても、メンテナンスが可能なのか、ランニングコストがどのような形で、どれだけ発生するのかが不安な部分だと思います。設計段階では、メンテナンスのフローを作るなど、先を見据えた工夫を行っています。意外に屋上とか外構の緑に比べても、維持・管理コストが大きく掛かっているわけではないようですね。ただ緑は生き物ですから、どのように維持・管理していくかという部分は、これからさらに技術が求められる部分だと思います。
Q
やはり壁面緑化では「維持力」が大事なポイントだと思います。管理者の第一ビルディング様のもとで、私どもも二番町ガーデンにおける壁面緑化の維持管理をお手伝いしています。担当者もマニュアル的に対応するのではなく、現場を見ながら、その時一番必要なことを実施することに心掛けているそうです。
武田さん
高さや、向いている面も北面・西面と違っていますし、日陰になっているところなど、それぞれポジションが違っています。それらの、その後の状況を教えていただけると次の設計にも活かせると思います。
Q
屋上庭園では、会議が出来る空間をコンセプトにされているとお伺いしましたが。
武田さん
屋上を緑化することは、当初より決まっていました。その空間をどう位置づけるかというところから、「オープンエアオフィス」というコンセプトが生まれてきました。ワークスペースとしての程よい領域感を演出するために、緑とタペストリーガラスのスクリーンに囲われたミーティングゾーンを設けています。パソコンを持ち出すことは勿論、プロジェクターが使えるように電源なども用意しています。室内と異なり、開放的な空間は発想の転換にもなると思います。色々な人が集うことで、コラボレーションが生まれるきっかけになってもらえたらと考えています。書類を広げて打合わせをされたり、昼休みにはお弁当を広げて楽しまれている方々も多いようですね。
Q
御社の手掛ける建物では、屋上緑化や壁面緑化など、環境配慮に特に力を入れているように感じますが。
武田さん
そうですね。私たちには、まちづくりを通じての真に価値ある社会の実現を基本使命とする三菱地所グループの行動憲章があります。その第3条には「地球環境への配慮」が掲げられ、経営の重要課題となっています。その1つの方法が屋上緑化や壁面緑化です。環境に力を入れていこうという考え方は、根幹の部分にありますね。
Q
これから壁面緑化や屋上緑化を考えられている読者の方へ一言お願い致します。
武田さん
この現場は、隣接するお寺の境内の緑と、壁面の緑、屋上の緑が立体的に繋がっていることが大きいことだと思います。今後は、ただ壁面があって緑がある、屋上があって緑があるというのではなく、その緑が事業者や周りの人々にとって、どういう位置づけなのか、どう大切なものであるのか、そういう必然性のあるストーリー作りが大切だと感じます。「必然としての環境配慮」とでもいいましょうか。もちろん何も造らないことが自然や周辺環境にとって良いことかもしれませんが、デザイナーというのは、造らないことが仕事ではなくて、造らないといけない時に何を考えるかが役割だろうと思っています。これからも使う人にとって気持ちの良い空間を提供していきたいですね。
Q
本日は、貴重なおはなしをどうもありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します。

(注)「二番町ガーデン」紹介ページにおける写真画像は、株式会社三菱地所設計様より
ご提供いただいていますので、写真の無断転用を禁止致します。

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